3月 40年間の幼稚園生活に区切り

 北京五輪は過去最高のメダル獲得数でした。ジャンプの小林陵侑選手、スノーボードの平野歩夢選手、スピードスケート1000mの高木美帆選手の金メダルだけでなく、カーリングのロコ・ソラーレなど多くの選手の活躍に一喜一憂しました。メダルは獲れませんでしたが、フィギュアスケートの羽生結弦選手の「努力が報われないこともあるんだな」やジャンプ団体でスーツが規定違反となった高梨沙羅選手の謝罪コメントは切なくなってしまいました。またフィギュアスケートでドーピング問題の渦中にあったワリエワ選手は疑惑や好機の目にさらされる中での演技は気の毒としかいいようがありませんでした。いずれにしても五輪というものは国を代表しているということなので選手は想像しがたい重圧と戦っているのだと感じました。五輪がある度に、いつか龍の子の卒園児が五輪に出場してくれることを夢みています。
 令和3年度も今月を残すのみとなりました。令和2年度からの新型コロナの感染拡大により「登園自粛」や「家庭保育のお願い」などで保護者の皆さまには大変なご苦労をおかけしました。また、それに伴い行事日程や内容も度々変更になり、申し訳ありませんでした。ただ行事を中止ではなく、職員一同でその変更案を精一杯考えたつもりです。
 私事ですが、今年度をもって龍の子幼稚園園長を引退する意向です。後任は青木英里子先生にお願いします。
 思い起こせば40年前に高校教員から幼児を担当して戸惑いながらも「子どもって思ったよりできることが多いんだな」と感じました。専門知識は何も持っていなかったので、子ども達と関わり遊ぶ中で得たことを、後から専門書などで学びました。その都度、「なるほどなあ~、その通りだよな」と後付けの知識を少しずつ増やしていきました。
 賞も多くは子どもから提案されたものでした。最初の認定証は「もんきー賞」、小学校の授業参観に行くと、体育の授業でいくつかの遊具を行なっていましたが、雲梯をできる子がほとんどいませんでした。最後まで渡れたのは龍の子の卒園生2名だけでした。龍の子でも特に力を入れて雲梯を行なっていたわけではなかったので、園に帰ると子ども達を集め、「この雲梯を14本全部渡り切ったら賞状をあげるよ」と伝えました。すると何人かがすぐ渡り切ってしまい、急いで職員で賞状を考えました。賞状名は『雲梯を渡っている姿がお猿さんみたいだから「もんきー賞」にしよう』と考え、急いで賞状を作成しました。すると子ども達はどんどん賞状を獲得して行きました。そして2~3日すると「先生、ぼく(雲梯を)一本抜かしで渡れるよ」「私は後ろ向きでもできるよ」という子が現われました。「新しい賞状を作るね」と一本抜かしで雲梯を渡れた子は、とてもすごいから「すーぱーもんきー賞」、後ろ向きで渡れた子は「うるとらもんきー賞」と名付けました。フラフープを始めたきっかけも、なわとびがなかなかできない子用にフラフープを持ってピョンと回せば、跳ぶコツがつかめるかな?と思って数本購入しました。すると2~3日後に「先生、フラフープ(を)回せるよ」と回す子が数人出ました。「ほんとだ、すごいね。みんなもできるかな!」と声を掛けると、できる子がどんどん増えてきて、「先生、どのくらい回せるか(時間を)計って」となりました。そこで「じゃぁ、フラフープ大会をしよう」となり、現在に至っているのです。
 このように意欲的な子ども達に囲まれて、いつでも楽しいことを発見する新鮮な喜びの毎日でした。
 園の私の業務は「子ども達の運動遊び」「経理」「バス運転」が主なものでした。経理は、高校教員時に商業や簿記を担当していたのである程度理解できました。
バスは龍の子に入ることが決まってから大型免許を取得しました。怪我をして苦戦しながら運転したこともありました。入園当初、お母さんから離れられなくて大泣きしていた子が徐々に泣かないようになり、そのうちに元気に「おはよう」と乗り込むなど変化している様子をみるのが本当に楽しみでした。
 学校法人認可を得る時には1年で360日勤務、それも1日の勤務時間は15時間以上でしたが、署名運動など多くの人に支えられ、学校法人認可を得た歓びは忘れません。
 幼稚園教諭の仕事は本当に幸せいっぱいの仕事です。例えば、なわとびができなかった子が跳べたのを見た瞬間の喜びは例えようがありません。「龍の子に在園できたことに感謝します」と保護者に言われると「頑張ってやってきて良かった!!」と思います。また卒園生が訪ねて来てくれて「今は○○しています」「龍の子の思い出は…」と言われると本当に嬉しくなります。
 園長は引退しますが、龍の子学園の理事長は継続します。来年度から「みちるーむ」が市の委託事業「支援センター」として出発する予定です。今までよりも多くの未就園児親子が訪れるようになるでしょう。今後も、そんな親子に「子育てアドバイザー」としていろいろなアドバイスを送ることができたらと思っています。こども園井戸端会議(未就園対象)・子育て井戸端会議(在卒園児対象)・いろは広場(満3歳児対象)は今後も継続しますし、あさがお(満3歳児クラス)組で行なっている子育てQ&Aなどは希望があればいつでも実施するつもりですので声をかけてください。
 また二つの大学で幼稚園教諭・保育士を目指す学生さんの講義をする予定です。現場の楽しさをできるだけ伝え、一人でも多くの学生が幼稚園・保育園に勤めることを目標にしてくれたら嬉しいと思っています。
新聞投稿などで「世代交代」が大切と訴えてきました。青木園長、敦士教頭、佐藤副教頭と職員で知恵を出し、話し合いを重ね、更に良い龍の子幼稚園を作ってくれることを願っています。