9月/褒められれば誰でもやる気に

 長い夏休みはいかがお過ごしだったでしょう。7月からの猛暑は8月中も続きましたね。まさに災害レベルの暑さです。過去の経験則に基づいて判断すると危険が伴う異常な暑さですので、園としても7月より、汗を吸い取るようにシャツ着用(着替えも用意)、室内においても、10~15分おきに水分補給、その際に「飲んでね~」ではなくて、一人ひとりがどのくらい飲んだかも確認。塩分補給としてしょっぱい飴や梅干しも定期的に一日に何回か提供などの熱中症対策を立て、保護者の皆さまにも協力をお願いしました。
 外へ出る場合は時間を計って室内に戻すようにしています。また室内の温度も27度と普段より少し低めにエアコンをつけています。とにかく私がこの仕事を始めて35年経ちますが、こんな対応をしたのは初めてのことです。愛知県で小学生が虫取りの校外活動から帰って熱中症で亡くなるという事件がありましたが、先生方も過去の自身の経験則に基づいて判断した結果だと思います。過去に類を見ない異常な事態が起こっていると考えた方が良いですね。
 倒れる寸前まで走っているのが子どもです。子どもの安全を見守るのが大人の役目、管理・監督が試される機会だと考えなくてはいけません。
 夏まつりは猛暑のうえに台風12号の接近によって急遽午前中開催となり、ご迷惑をおかけしました。当日の夏まつりを中止にした幼稚園も多くあったことを後から聞きました。内容は変更しましたが開催できたことは良かったですね。また当日の暑さを考えると室内開催も正解だったなと思っています。
 この暑さが今年だけに止まらず来年以降も同じ状態になることが予測されます。夕方でも30度を超える暑さがあったとすると今年のように室内を中心に午前中開催も選択肢にいれた方が良いかもしれません。
 2学期は運動会もありますが、今の暑さが続くようでは、日中の園外での活動は、ほとんど無理になります。状況によっては運動会種目の見直しも検討しなくてはいけません。子どもの安全を最優先に考え取り組みたいと思っています。
 さて英和学院大学の今年度の講義(前期のみ)が無事終了しました。大学の講義で毎時間一つ手品を伝授しています。子ども達の前に立った時に子ども達を引き付ける術(すべ)として、です。10個くらい教えた後、授業の中で一人ずつ前に出て子ども達が目の前にいるつもりで披露する会を行いました。終わった後、「ここをこういう動作の方がもっと良いよ」とか「こういうふうに話すと楽しいよ」などの一人ひとりにアドバイスをしました。その時のことをHさんはレポートでこう綴っています。

 座光寺先生に手品を褒めていただき、とても嬉しかったです。私は普段、家やアルバイトなどの生活の中で褒められることがあまりないため、素直に嬉しかったです!褒められ「嬉しい」という感情を大切に、実習などでも子ども達ができたことに対して一緒に喜んだり、褒めたりと嬉しさを共有していきたいと思いました。

 いくつになっても褒めることは大切ですね。また自分が嬉しかったことを人にもしてあげようと思えますよね。
 授業について「どう感じたのか?」だけでなく学生一人ひとりの家庭環境や性格などを知りたくて、授業の終わり20分程度でレポートを書いてもらっています。その返信だけで毎週20,000字を超え、赤ペンが毎週1本カラになりました。書くのはとても大変でしたが、学生一人ひとりのことが性格も含め良く分かりました。レポート返却を出席代わりにしていましたが、誰もがすぐに返信の内容をじっくり読んでいました。
 最後の授業のレポートにHさんはこう書いています。

 座光寺先生の授業を受けて、私たち一人ひとりのことを知ろうとしてくださり、とても嬉しかったです。私ははじめ、本当に自分は保育者に向いているのか、本当になりたい職業なのか、自分でもよく分からず不安でした。しかし座光寺先生は毎回小レポートで「Hさんなら絶対良い保育者になれる」などのポジティブな言葉をかけてくださり、丁寧なアドバイスをしてくださいました。私は先生のおかげで保育者になりたいと強く思うことができました。

 保育園・幼稚園の先生になろうと思って大学に入って来ている学生でも、不安があり迷っているのですね。そんな時に「大丈夫だよ。あなたのこんな所が先生に向いているよ」と具体的に褒め、やる気を起こさせています。
 さらに次のようにも綴ってくれました。

 私が保育者になったら、子ども達が将来大人になった時に幼少の思い出が楽しかったと思ってもらえるように、ずっと子ども達の心に残る存在でありたいです。また座光寺先生が私にたくさんの言葉をかけてくださったように、私も子ども一人ひとりの目線に立ち、子どもの気持ちになって声掛けしていきたいと思いました。先生の言葉ひとつひとつが私の胸に響きました。私も座光寺先生のような立派な先生になりたいと思います。先生に会えて本当に良かったです。2年間ありがとうございました。

 こんなに言ってもらって教師冥利につきますね。ただ20歳を過ぎた学生でも、少し褒めてもらうだけで前向きになれるのです。また褒めてもらって嬉しかったら、次に他人にもしてあげようと思えるのです。ましてや小さな子だったら、もっとそうですよね。
 レポートの内容が秀逸だったMさんは、新聞投稿を勧めると中日新聞投稿欄に掲載されました。実習がうまくいかずに悩んでいた彼女にとって「自分の文章が新聞に掲載されたことが大きな自信になった」と喜んでいます。
 レポートでは、私の新聞投稿を3~4編読んで感想を書くこともさせました。文章を読んでの自分の意見をまとめる経験をさせたかったのですが、「文を書くことが苦手でしたが、この授業で書くことに抵抗がなくなりました」また社会問題や話題のニュースについても話し合いをしたので「いろいろな出来事に関心を持つようになり、自然に新聞を読むようになりました」などの嬉しい感想もいっぱいありました。機会を与えてあげれば、誰でも好奇心が強くなるものです。