2月/子どもを中心にした制度作りを

 1月27日㈰16:00~東京のFmラジオ局レインボータウンに出演させていただきました。昨年12月7日付の静岡新聞投稿欄「こどもを守れる就業体系に」を目にした関係者から「首都圏で発信した方が多くの人に問題提起できるのでは…」と出演依頼がありました。放送エリアは東京都内ですが番組名「光よ、あれ!」座光寺明をYouTubeで検索していただければ動画配信されていますのでご覧ください。
 以下放送内容です。
(認定こども園へと移行した理由は?)
 龍の子幼稚園は「子どもの為の子ども園(その)」として幼稚園教育を推進してきましたが、待機児童問題が取り上げられる中で、長時間預かる保育園に於いても幼稚園教育を進めていくことができないだろうかと考えて踏み切りました。
(幼稚園教育とは?)
 集団生活をする中で、小学校就学に向けて、一定の目標や目的を持ち、それを3年で計画的に行なうカリキュラムのことです。ただしカリキュラムを組んでも、日々の中でそれを検証し、修正をしていかなければいけません。例えば、はさみを使った活動でA君はチョキン!と1度切りしか出来なかったのに、今日はチョキンチョキンと2度切りが出来るようになった。だから教材の切込みを入れる必要はなく、連続切りの教材も準備しておこう。B君は1度切りもなかなか難しいから多く切り込み入れておいてやりやすくしてあげよう。など毎日の検証が出来ないとスムーズな成長に繋げてあげることができません。この検証や教材準備に2~3時間を要します。幼稚園の先生は3時には子ども達がいなくなりますから十分な時間がありますが、保育園は11時間を子どもと園で過ごすのです。だから検証する時間がありません。そこで9時~2時までの時間を幼稚園部の先生が担当し、朝の早い時間と午後から夕方の時間を保育園部の先生が担当するように分業にすればそれぞれの先生の負担がありません。しかも保育園部の子ども達もしっかりしたカリキュラムに基づく幼稚園教育が受けられます。
(実際に移行して?)
 幼稚園部と保育園部の連携もとれ、幼稚園教育に関しては大きな成果が出ています。しかし保育園部を作って疑問に思うことが多々あります。幼稚園は教育をする所で、保育園は保護者に代わって子どもを安心安全に預かる所というように設立の主旨が違うので運営規定も少しずつ違います。例えば幼稚園はグランドが園児数×4.5㎡ほしいが保育園はなくても良い、教室の面積も人数×約2㎡は変わらないのですが、保育園は安全面を考えピアノとかロッカー等の固定物を引いた面積で確保しなければいけません。幼稚園は教室の面積が満たしていれば良いです。そしてこども園は幼稚園・保育園両方の基準の厳しい方を取ることになっています。その点において、こども園に通う子どもはとても恵まれています。
(問題点は?)
 ただしここで疑問があります。暴風雨などの警報が出た時には小中学校は休校、幼稚園も休園になりますね。これは生徒や園児の安全を考えてのことですが、保育園はどんな警報が出ても休園にすることは出来ません。
小中学生が危険だからと自宅待機になっているのにもっと小さな乳幼児を保育園が預かるのはおかしくありませんか?昨年は大型台風21号が静岡県を直撃しました。停電や断水がありましたが、幼稚園部は休みでも保育園部は受け入れをしなければいけませんでした。多くの保育園は停電のため、給食も作れないので非常食でまかなったそうです。またある保育園は、台風で屋根が飛んでしまい、ガラスも割れて教室内が雨とガラスで大変な状態になりましたが、それでも園児の受け入れはしたそうです。またインフルエンザが流行する季節ですが、インフルや風疹、おたふく風邪などの法定伝染病がクラスのおおよそ2割程度になるとそれ以上の感染拡大を防ぐ為に学級閉鎖となります。これも幼稚園はありますが、保育園にはありません。
学級閉鎖は学校安全保健法で定められています。小中学校と幼稚園は学校安全保健法に該当するが保育園は該当しない為なんだそうです。幼稚園児より小さい子であり、長時間園生活をする保育園児の安全は考えているのでしょうか?
(なぜこうなっているのか?)
 これは、働くお母さんたちが仕事を休むことができないことが一番の要因と思われます。国は子育て支援ということで女性の就業を勧めています。確かに産休や育休制度は充実してきました。でも育休が終わっても、子どもを保育園に預けている場合は優先的に休める制度がほしいです。同様に「子どもが高熱です。すぐお迎えに来てください」と連絡しても「今は仕事を抜けられない」と何時間も待たされることがあります。一刻も早くお医者さんに診てもらって大好きなママの基で安心したいという子どもの気持ちを考えると切なくなります。
(この対応策は?)
 企業の子育てランキング制度を設けてもらいたいです。子育てしている方には「こんな優遇をしています」というのを各企業に検討してもらって提出し、各自治体が精査し、ランキング方式に発表するのです。発表されることで企業も真剣に子育て支援を考えるでしょう。また真剣に対策をとっている企業は子育て世帯から評価され良い人材が集まってくるはずですが企業に於いてもメリットは大きいはずです。
(幼児教育・保育の無償化は?)
 今年の10月からは幼児教育・保育の無償化が始まります。そのための費用が7,100億円、そのうち所得が幼稚園で680万円以上、保育園で640万円以上の家庭が45%を占め、その額は3,200億円。この所得層分の無償化を止め、他に回したらと考えます。
(4号こどもにも補助金を)
 所得制限を設けて、そこで浮いた予算を専業主婦として子どもを自分で育てている家庭に回してほしいと願います。0歳児を保育園で一人預かると約250~300万円の費用がかかります。本人負担ももちろんありますが、国と自治体の負担は月額15~20万円程度にはなります。保育園に子どもを預けている家庭にはこれだけの補助があるのに、自分で子育てしている家庭には0円ではあまりに不公平だと思います。これらの家庭にも所得制限は必要ですが、補助金を出すべきと思います。
今、国の制度では幼稚園児を1号認定児、3歳以上の保育園児を2号認定児、0.1.2歳児を3号認定児といいます。私立幼稚園では0.1.2歳児を家庭で見ている子を4号こどもとして、4号こどもにも補助金システムを、と訴えています。
(他に伝えたいことは?)
 幼稚園・保育園の先生を目指す学生が激減して現場はとても困っています。新しく保育園を設立したが働く先生の確保が出来ないので定員を大幅に減らしている所はとても多いです。
(原因は?)
 まず今の学生さんが小さい子と関わった経験が少ないことが挙げられます。少し前までは兄弟姉妹だけでなく、従姉や近所の小さい子との関わりがあったのですが、現在はほとんどありません。教育実習に来て初めて乳幼児と関わるという子がとても多いです。だから子どもの行動の一つひとつに戸惑い、どんな対応をしたら良いのかわからなくて「自分にはむいていません」となっています。
これを解消する為には小中学校で1年に1回くらい幼稚園や保育園に行っての実習をしてもらいたいと願います。そこで子どもに関わる経験をしておけば子どもの可愛らしさも自然にわかると思います。例えば保育士を目指さなくても、結婚して子どもを持ちたいと思う気持ちが高まります。それが少子化対策にも直結するはずです。またクラスの中で積極的に前に出ることができない性格の生徒が幼児に関わることはとてもお勧めです。幼い子が自分を頼ってきてくれるのです。頼られた経験を初めて知って自分の存在意義を、自己肯定感としてとらえるようになるきっかけになることも多いです。
(他には?)
 もうひとつが「幼稚園・保育園の先生は給料が安いから高くしよう」「仕事時間が過酷だから軽減を」という政府の待遇改善策のアナウンスが逆アピールになってしまっています。それを聞いた学生のお母さんの助言が先生を目指す子にブレーキをかけています。今は2~3年前と比べて給料は格段に上がっています。本園でも初任給は手当を含めれば20万円を超えます。残業もほとんどありませんし、有休も使って平日に休むことも可能です。特にお母さん達の友人の時代は厳しかったことも事実ですが、今はまったく違いますので、各園にお尋ねください。
(大切なことは?)
 待遇面を大企業に比べれば劣るのは確かです。ただ自分が子ども達の人格を作る時期に関り共に育ち合える(人として)というやりがいはとても大きいです。純真無垢な子ども達が「先生〜!」と呼んでくれ、自分だけを頼ってくれるという幸せ感。行事が終わる度に保護者が「先生本当にありがとう」と涙を流しながら言ってくれるという経験は他の仕事ではなかなか味わうことはできないと思います。