10月/我が子の将来・未来を見据えて

 インディアンまつりへのご協力ありがとうございました。暑さ対策のために従来の7月開催を9月に、外中心の活動から室内部分を増やし、外での活動を最小限にしました。大切な「縦割り(ひとつのグループに年長・年中・年少が混在する)保育」「フィクションの世界を家族と共に楽しむ」は達成できたと思っています。
 8月31日(土)ひまわり(年長)さんが水泳大会を行ないました。顔付け・蹴伸びで保護者の股の間を通過できたら「すーぱーいるか賞」です。全員が顔付け・蹴伸びをしっかりできていて感激しました。夏やすみに入る直前には顔付けが恐る恐るだった子も何人かいましたが、家族で頑張った成果と嬉しく思います。どのご家族も3年間本当に頑張ってくださったことに感謝します。この関わりを思い出していただければ小学校以降の生活でも大抵のことは乗り越えられると思います。
 れんげ(年中)さんは来年の水泳大会を見据え、9月にもプール参加会を実施しました。すみれ(年少)ちゃんも夏やすみに入る前に親子プール教室を実施し、お風呂での水の関わり方を伝えました。更にあさがお(満3歳児)組やつぼみ(保育園部・2歳児)組も親子プール教室を開催しました。水を通して親子の関わりがしっかりできると良いですね。プールが終了してもお風呂での関わりがとても重要になってきます。
 私が龍の子に勤務するようになった昭和58年、当時は園では直径6mほどのプールを使用して水遊びをしていました。「年長児を大きなプール入れてあげたい」と思い、公共施設を訪ねました。すると新設直後の竜洋BGプールが「いつでもどうぞ」と受け入れてくれました。翌59年よりBGプールの使用が始まりました。当時はプール指導など何もできなかったので安全面だけを考えて子ども達を自由に遊ばせていました。数名の子が「大きいプールに入りたい」というので、ヘルパー(腰に付ける浮遊具)を付け、ビート板を持って管理する中で遊ばせました。そして、その年の最後の使用となった日にその数名の子が「どれだけ泳げるようになったか試したい」と申し出があったので「やってみな」と言うと約10名の子どもが200mを泳ぎました。自分が「何も指導していないのに200mも泳げるようになる子がでるとは!!」頭を打たれました。「来年は全員にしっかりプール指導をしてみんな泳げるようにしてあげよう」と決意し、水への関わり方を徹底的に学びました。書物だけでなく、水泳指導をしていた方やスイミングスクールの指導員にも、いろいろな方法をうかがいました。
 翌59年からは小プールで水への関わり方、そして水に浮く方法、バタ足で進む方法と少しずつ練習をしながら大プールへと移行し、最終的には大プールで100m完泳できたらBG大賞を授与することにしました。その年以降も、毎年全員が完泳できました。しかしプール遊びで各園が公共施設を利用するようになり、借用回数が制限されたことと、基本の顔付け、蹴伸びを徹底強化した方が良いとなり、現在の方式になっています。
 当時のプールで思い出深い出来事があります。リョウちゃんは年長児でしたがプールは苦手でした。お母さんは「ひまわり全員が100m泳げて、リョウ一人できなくても良いですからプールはやめさせてください」と訴えてきました。私は「お母さん、1回だけチャンスをください。それでもリョウちゃんがイヤと言ったら考えます」とお願いしました。BGプールに行き、クラスで大プールに入って25mを泳ぎました。リョウちゃんは一人「イヤだ!!」と言っています。私はリョウちゃんに「行くよ」(ヘルパー装着)とビート板を持たせ、大プールに入りました。足が着かない深さに驚き、大泣きです。「怖いよね。びっくりしたよね。でもビート板を持っていれば沈まないから大丈夫だよ」と諭します。しばらく大泣きした後に寝たふりを始めました。「リョウちゃん、ゆっくり寝てもいいよ」と隣で付き合います。40分程度するとリョウちゃんが目を開けました。「リョウちゃん、目が覚めた?」「少し足を動かしてみようよ」と言うと少しバタ足をしました。すかさず「スゴイよ、リョウちゃん進んでいる」と褒めると、またバタ足をしました。「スゴイよ、どんどん進んでいるよ」と褒め続けるとバタ足を続けます。15分間をかけて25m泳ぐことができました。(トータル時間は入水から60分を超過しています。今だったら虐待と言われてしまうかもしれません)「リョウちゃん、すごかったね」とゴールした後ろを振り返り「こんなに遠くまで一人で泳げちゃったんだよ」と驚いてみせると少し笑顔になりました。「リョウちゃん、今度も座光寺先生と一緒だったら大プールできる?」と聞くと「うん、いいよ!」と即答。次回は嫌がることもせずに25mをみんなと一緒に泳ぎました。「リョウちゃんスゴイね。今度は座光寺先生じゃなくても、他の先生がそばについてもできそうだね」と言うと「他の先生でも良いよ」と、即答。そのまま水泳大会では見事100mを完泳できました。
 小学校高学年になった時にリョウちゃんのお母さんと再会しました。お母さんに「リョウちゃんは元気ですか?」と尋ねると「はい、勉強は今一つですが、水泳が得意で選手として頑張っています」。「お母さん、ひまわりの時のこと覚えていますか?」と聞くと「本当に申し訳ありませんでした。私はリョウが辛がっている姿を見て、ただ『その苦しみを取り除いてあげたい』とだけ考えてしまいました。あの時の座光寺先生の関わりがなかったら、リョウの水泳の才能は開花せずに終わってしまっていたかもしれません。本当にありがとうございました」。
 いつも言うことですが、親は「我が子が苦しむ姿」を見るのはとても辛いことですよね。でもその苦しみは「取り除いて」あげれば解決することなのか、「乗り越えさせて」あげなければいけないことなのかを保護者として考えなければいけません。そして乗り越えさせることを選択したならば、子どもの心に寄り添って「同意・共感」をいっぱいした後に少し背中を押してあげる行為が大切です。
先日、水球で静岡県として初の全国制覇を成し遂げた第31期生・宙(中2)くん、幸真(中2)くんのお母さんから、子どもは「龍の子時代に頑張る経験があったから、ここ一番で踏ん張れる」そして保護者として「在園当時は大変と感じたこともありました。しかし親として子どもへの励まし方が分かり、それが今とても活きている」「在園児の皆さんにも、親子とも今の経験が必ず活きることを伝えて欲しいです」との言葉がありました。
 我が子の将来・未来を見据えての関わりをお願いします。どんな我が子に成長してくれるのか、そのためには保護者として、今何をしたら良いのかを考えてください。